
生物の遺伝子であるDNAを比較して祖先をさかのぼる学問を分子系統学といい、30年ほどまえから発展してきた。
わたしが生物学に興味を持ったのはそれよりも前だったので、最新の分類とは異なることがわたしの頭にはインプットされていたりする。
被子植物の 分子系統学にのっとった分類ならAPG体系というのがあって、やはりわたしが覚えている分類と異なるところもある。
時代に置いて行かれてはたいへん!と、APG体系の本を読んだり、庭の植物を分類してみたりした。
それで次は動物である。
著者の長谷川政美氏は、氏のXの自己紹介欄によると「香川県高松市在住の現役を引退した進化生物学者」だそうだ。科学バーで「すべての生き物をめぐる 100の系統樹」を連載中なんだそうだ。
『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』には「僕たちの祖先を探す15億年の旅」という副題がついている。つまり、この本は古い方から新しい方へ話が進むのではなく、新しい方から古い方へ話が進むのだ。
そして、木の幹が枝分かれしていくような形の系統樹のほかに、同心円から放射状に広がっていくような形の系統樹マンダラというものを多用されているのが特徴だ。
系統樹マンダラというのは馴染みがなかったので新鮮だ。適応放散 という生物学用語があるが、放散しているイメージが伝わる気がする。
系統樹マンダラの見た目は、上の「すべての生き物をめぐる 100の系統樹」のリンク先で見ることが出来ます。
それぞれのグループに含まれる具体的な種が系統樹マンダラではいくつも示されているのだが、その写真がたくさんこの本には載っていて楽しい。しかもそれらの写真のほとんどがが長谷川氏撮影のものなのだそうだ。知らない種もたくさんあった。しかし種名の文字が小さくて、老眼にはつらい . ... 。
ヒトの祖先を辿る道筋で話は進む。霊長類、ニホンザル、マーモセット、メガネザル、ネズミ、と祖先が分岐したのが古い時代になっていく。
大枠が分かるように一番最初に真獣類の系統マンダラが見開きで載っている。真獣類というのは、哺乳類の中でメスが胎盤を持つなかまのこと。
ネズミの先はどうなるのか、下のリンクにはこの本の目次が載っている。進化の歴史は単細胞生物までいきつく。壮大だなあ。
進化は弱肉強食だと思われがちだが、そうではない要素が大きいと「中立説」を木村資生(きむらもとお)氏が唱えたのは重要だ。ともすると観念的になりがちな進化論の話に数学を取り入れたのだ。
わたしが中立説に受けたインパクトについては、千葉聡 『歌うカタツムリ―進化とらせんの物語』 - ≪手を動かさねばっ!≫ に少し書きました。
長谷川氏はそれを受け継いで進化の研究をされた。
長谷川氏は引退されたが、一般向けの発信を勢力になさっている。Xにも連日のように投稿がある。広い生物の世界を垣間見せてくれます。
サイト「すべての生き物をめぐる 100の系統樹」ではそれぞれのグループについての話が多いので、俯瞰した視点の話がまとまっている1冊なら『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史』をぜひおすすめします。